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2008/12/23

39人の刺客〜新婚クラッシュ地獄変〜

 イノッチの結婚。

 まあ、正直言って今までの新婚クラッシュは、多少甘えていたところがあると思う。というのは、誰かしら知っている人がいたり、新郎か新婦のどちらかが仲の良い友人であったり。だから、多少の無茶、暴言、暴挙などがあっても「はは、芳川は面白いよなあ。ホワット・ア・ファニー・ガイ・ユーアー。とか言われて、あはは、ほほほ、へへ、ハッピーうれぴー、みたいな感じで、丸く、も無いと思うけど、概ね楕円、みたいな感じで収まっていた。

 今回は違う。

 どうも、そもそも、今回の集いのニュアンスを訪ねてみるに、「イノッチ結婚記念 サプライズパーティ~ブラバンOBOG大集合~」みたいな。み・た・い・な。感じのハッピーうれぴーなパーティーであったのである。ま、どこに注目するかっつうとサブタイトルの部分、ブラバンと指定されている部分であり、このブラバンっていうのは、ブラジャーをバンバン見せてる、とかそういうハッピーうれぴーな意味ではなく、ブラスバンド。吹奏楽部の略称であり、イノッチをはじめ、牛角アイス(仮)からも参加する二人(私とは仲良く無い)も含め、全参加者40名中39人が吹奏楽部という状態。残りの一人、バレー部の私を除く全員が青春時代をトランペットとかフルートとかをプープー吹くことに賭けたレイディースおよびジェントルメーンであり、ていうか、はは、分かるか?貴様らに。このおれのアウェイ感が。完っ全に、どアウェイ。セグウェイに乗ってランナウェイしたい。新郎も新婦も、その他の39人に関しても、友達じゃないし、電話番号も知らないし、ま、他人なんだよね。

 そんな中でそもそも参加したいって言い出すこと自体が空気を読めない行為であり、なんだろう、純粋なる新婚クラッシャーとしての使命感のみでの参加という、自分的に新次元なのだよ。分かるかね。この孤独感。新世界を切り開く使命感。誰にも頼まれてねーっつうかどちらかというと煙たがられるけど切り開くいばらの道。はは、おりゃあ行くよ。どこまっでもよ。

 で、私も含め牛角の皆さんはライブ後の参加なので若干の遅刻が確定。で、牛角の皆さんは歌歌う人たちですから、なんか出し物として、ドリームズカムトゥルーの、ラブラブラブ?っていう、ソングをシングする段取りになっているそうで、その歌唱練習なども行いつつ移動ということであった。で、私は実はそんなに仲良く無い牛角の中の二人が歌っている間に、ヘイとか、ホイとか相づちを入れながら尻でリズムを取っていた。で、思いのほか会場が近く、すぐに到着。早速牛角の二人は「あ〜久しぶり〜」「元気してた〜」などと、ブラバントークを炸裂させつつも友達のワーに、飛び込んで行った。

 はは、孤独なんですけど。

 こうして結構広い会場を見回すに、知ってる人がひっとりもいない。だって私はバレーボール部。で、他の皆さんはブラスバンド部。在学中ですらたいした繋がりも無かったのに、卒業後10年ぐらい経つ現在となっては、もうねー。普通にわからんわ。私は小さくなって会場の隅っこで体育座りしてぶつぶついって地球が滅亡するのを待った。

 というのは嘘で、私はこのような事態にも全く臆していなかった。

 まあ、このイノッチ会の直前までやってたライブの中で、100人ぐらいの客の前で乳首とパンツ丸出しでヘイヘイ言いながら踊り狂った私である。もうね、恥辱という観念が死んだから。恥ずかしいこととかなにも無いから。何かを行うことによって「あ、あたし、こんな普通じゃないことして、頭おかしいと思われたらどうしよう?やっだー、みんなと仲良くしたいのにー♪」みたいな観念が音を立てて崩落。もうね、怖いものは何も無い。このおれを止めたければ頸動脈でも切り裂いて止めてみろやこの野郎。みたいな感じで。たかだか40ぐらいのモブどもになんと思われようが屁とも思わぬ覚悟が醸成されてしまったのである。はは、おれ、こえ。

 懐かしトークを繰り広げる牛角の二人を適当に見捨て、私はビュッフェ形式の食事コーナーに近づいた。鶏の死体の積んである大皿に首を突っ込んで直接に鶏肉を食う。犬のように。はは、うまいうまい。これはね、あたい鶏肉だと思うよ。牛、豚でなく。あたいグルメだからそーゆーのも分かるの。へへ。とかぶつぶつ言いながらソースまみれの口元をウエットティッシュで拭いた。バーカウンターでお姉さんに頼む。焼酎なんでもいいからロックで。お姉さんがそれを用意する。ぐいと飲み干し、もう1杯おんなじやつください。と、頼んで、また飲む。くくく。ははは。ははははは。私は、私は。鞄の中から獲物を取り出した。私を見ている人など誰もいない。なぜならみんなは仲良しで、私はアウトサイダーだから。はは。内ポケットに獲物をしまった。イノッチ。イノッチ。悪いな、恨みは本当にないんだけれど。私は新郎新婦の席に近づいた。

 
 
 
「ヘイ。アーユー、イノッチ? おれのこと、分かる?」

「あ、はは。え? 来たんだ。アレだよね。芳か」

 パンッ。

 乾いた銃声が会場に響いた。

 きゃああ、新婦の叫び声が続いた。

 イノッチは、胸を両手で押さえたまま目を見開いていた。

 私は冷たい目をして、引き金を引いたままの右手を見つめていた。
 
 ああ。

 また人を殺してしまった。

 
 
 fin

 

 

 

 

 というのは冗談で、今回の新婚クラッシュの小道具を紹介します。

小道具1:凶器の銃
 Gun_2

 弾丸は2発ほど装填可能で、5mぐらい飛ぶ。結構、飛ぶ。結構、速い。で、先っちょが吸盤になっていて、たとえば
 Tama
 テレビなどのガラス張りの面にくっついたりします。

 
小道具2:キャッチャー・イン・ザ・ライ
Catcher
 これは鞄に入れておいただけなんですが、分かる方だけ分かってください。

 と、まあ、二つだけです。本当は花火とかも家にあったんですが、ライブの荷物が多くてあんまり鞄に入らずにこれだけでがんばりました。

 

 

 ●

 で。イノッチは「マジかよ、なにすんだよ」などと胸を押さえているも基本的にヘラヘラ笑っている感じで、それがなんかムカついたのでもう一度乳頭めがけて弾丸を装填して発射するなどして私は精一杯の抵抗を試みましたが、基本的になんか幸せそうでした。

 その後、居場所のない会場をうろうろしていたら、ちょうどプクちゃんの野郎(詳しくは新婚クラッシャーの特にこのへんを参照)を発見し、発見したら発見したで「芳川氏~」みたいな気持ち悪いことを言うので、なんか無性に腹が立って、とりあえず眼鏡に対して弾丸を発射。そのまま記念撮影。

 Yosikawa_fuku

 あはは、おもろ。プクちゃん馬鹿じゃん。と一通り抱腹絶倒した後、「で、どうしてパーティなのに帽子被ってんの?ドレスコードって知らない?プクちゃん馬鹿なの?」などと聞いてみると、どうも歯切れが悪く、「察するに頭髪が薄くなってきているから帽子脱げないの?」と聞いてみると、静かに頬を赤らめて頷くプクちゃん。

 ま、頬を赤らめて頷くのがヤッダーかわいーとなるのは、顔の可愛い女子だけであってプクちゃんの場合は純粋にムカツク感じであったので、しょうがないのでドツキまわしつつ会場の私、プクちゃんを除いた残り38名の有権者の皆さんのもとを1件1件丁寧にあいさつ回り。「こちらのプクちゃんですが、帽子を被っているのは!! 確かに失礼ですがそれはこの通り!!(帽子を取る)ちょいとハゲてきておるからであって、別にイノッチに対する敬意が損なわれているからではないのです!そこんとこよろしくーぅね!!」などと、通常の私が家でテレビを見る音量を13ないし14として、概ね35ぐらいのボイスで絶叫。ブラバンの皆さんに、プクちゃんはハゲかけておるというインプレッションを植え付ける活動に誠心誠意取り組んだ。プクちゃんは半ば泣いて、かつメガネから吸盤が外れそうになるたびにグイグイと私がそれを強引にまたくっつけて戻すので「やめてくれよぅ メガネがゆがむよう」などと抜かしていた。確認すると、確かにメガネはけっこう歪んでいったりしていた。

 その後、牛角アイスのラブラブラブに合わせて尻を振る。それに飽きて逮捕されたキーボードの人のモノマネを熱心にする。イノッチと新婦の間に立って両方と方を組んだまま全員での記念撮影に映る。なんか大事そうなケーキの、「HAPPY WEDDING イノッチ&なんちゃら」と書いてある巨大なクッキーの9割を勝手に食す(イノッチは残りの1割の写真を悲しそうに撮影していました)などの通常の新婚クラッシュ活動を行い、あとは純粋な悪意からフクちゃんに理由なき暴力を振るったりした後、眠いから帰るわーと会場を後にした。

 39人が引いていたが、ライブを乗り越えた私はもう怖いものがなくなったのでそんなの気にしなかった。帰りの電車、不気味な顔で笑う男と目が合って怖かったが、それは車窓に映る私だった。あはは。はっは。怖いなあ、私。誰か、とめて、くれないかな。

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